奈良国立博物館「奈良博三昧」
令和3年8月5日(木)午後、奈良国立博物館「奈良博三昧 ―至高の仏教美術コレクション―」を観覧しました。
奈良博は明治28(1895)年、神仏分離で失われつつある仏像等を保護するために設立された経緯から、所蔵する約2,000件の多くが仏教美術品となっています。その一部は、なら仏像館で常設展示されていますが、この特別展は選りすぐりの245件を展示するものです。
この特別展の特長の一つは、写真撮影が可能なことです。しかし、ガラスケースに入っていたり暗かったりして、なかなか上手く撮影することはできません。
「第1章 ブッダの造形」では、普通の釈迦如来像と違って苦行で瘦せこけた出山(しゅっせん)釈迦如来立像(南北朝時代)が印象に残りました。
また、国宝刺繍釈迦如来説法図(飛鳥時代)も気になりました。
「第3章 写経に込められた祈り」では、聖武天皇が写経させた国宝今光明最勝明経(奈良時代)の金字が燦然たる光を放って紫紙に映えていました。
「第4章 密教の聖経とみほとけ」では、伝教大師・最澄筆の国宝尺牘(せきとく)(平安時代) は空海に対して礼を尽くした内容で、清澄で格調が高い文字です
なお、後期には代わって弘法大師・空海筆の国宝「金剛般若経開題残巻」が出展されるので、これも拝見したいものです。
「第5章 仏教儀礼の荘厳」では、たくさんの密教法具が出展されているなかで、特に重文独鈷鈴・三鈷鈴・宝珠鈴(平安~鎌倉時代)が印象に残りました。
「第6章 地獄極楽と浄土教の美術」では、 国宝地獄草紙(平安~鎌倉時代)のデフォルメされた表現を楽しみました。
「第7章 神と仏が織りなす美」では、手を大きく振って疾走する伽藍神(がらん)立像(鎌倉時代)がユーモラスに見えますが、修行を怠る者を懲らしめるために釘と槌を持って走り回っているそうです。
「第9章 南都ゆかりの仏教美術」では、重文増長天立像(平安~鎌倉時代)と、愛欲煩悩を表わす赤色に染められた重文愛染明王坐像(鎌倉時代)が印象に残りました。
今回の最大の収穫は、「第10章 奈良博コレクション三昧」の国宝日本書紀 巻第十巻(残巻)(平安時代)です。現存する最古の写本で、応神天皇紀の部分です。
何となく見ていたところ、吉野町・浄見原神社で行われる国栖奏の始まりに関係する記述がありました。
奈良博が所蔵する逸品が一堂に展示される充実した企画展であり、展示替え後の後期もぜひ観覧したいと思います。