近鉄文化サロン阿倍野「金峯山寺連携講座『先端科学が蘇らせた華麗な江戸時代の風俗』」
令和4年4月1日(土)午後、近鉄文化サロン阿倍野で「金峯山寺連携講座『先端科学が蘇らせた華麗な江戸時代の風俗』」を聴講しました。
講師は龍谷大学文学部歴史学科(文化遺産学)教授の北野信彦先生で、金峯山寺からは開会挨拶の五條順教管領を始め、閉会挨拶の五條永教執行長・司会の池田淳寺史研究室長・場内整理の田中岳良師と錚々たるメンバーが来ておられて驚きました。
扱われるのは、1661(万治4)年、金峯山寺に奉納された重要文化財「板絵着色廻船入港図額」で、横4.5m・縦2.8mと国内最大級の大絵馬です。
華麗な江戸時代の風俗が描かれていたのですが、今は蔵王堂の回廊に置かれており、歳月を経て劣化が進んでいました。
北野先生は、最先端の光学機器を駆使することにより当初の華麗さを蘇らせようと取り組んでおられます。
講演を聴いて絵馬が次世代に引き継ぐべき貴重なものであることが理解できましたが、次に、①なぜ山の中の金峯山寺に大船絵馬が奉納されたのか、②どこに架けられていたのかと言う疑問が出てきます。
池田先生には、ぜひ、この謎を解き明かしていただきたいと思います。
【講義の概要】
(1)はじめに
ア文化遺産学調査の一環として着手して一年で、今回は中間報告。
イ 70人が描かれており、服装・楽器・食器など当時のことを知る貴重な資料。
ウ 人物画像の彩色復元が大船絵馬の活用と保存につながる。
(2)歴史資料
ア 歴史学は先人達の歩みを知る学問分野だが、文字資料は勝者が作ったものなので都合の悪いことは書かれない。
イ 金峯山寺は、源義経や後醍醐天皇など敗者の側なので、そこに残っている資料は貴重。
(3)文化遺産学
ア 文化財・文化遺産は歴史の証言者。
イ 機械を使うことにより見えてくるものがある。
ウ 文化財は以前は古くさいイメージだったが、今は文化遺産として活用する新しいイメージ。ただし、観光面が表に出すぎると単なる「利用」になる恐れ。
エ 文化財は先人の努力があったので今に残っており、リレー方式で次世代に伝えることが必要。
オ 保存修復科学は、①文化財科学(検査)、②保存科学(内科)、③修復技術(外科)、④応急措置(救急)に分類。
カ 文化財・文化遺産の調査研究は、①価値を知る(歴史的・文化的評価)、②守り伝える(延命)、③活用する(大切さを知る)に分けられ、②をするために①がある。
(4)板絵着色廻船入港図額「総論」
ア 使われている金箔は純金製で、後世の銀を混ぜたものとは別格。
イ 描かれているのは、吉野川ではなく海。
ウ 描かれている70人には奉納者が含まれている可能性も?
(5)板絵着色廻船入港図額「各論」
ア 赤外線写真で、黒ずんでいた部分の詳細や下絵が見える。
イ 顔料分析で、着物の色や柄がわかる。
ウ 遊宴の楽器として、一節切(ひとよぎり、縦笛)、胡弓・三味線・小鼓などが描かれている。
エ 可搬型蛍光エックス線分析調査で盆に盛られた果物に葉っぱが付いていることが判明。蜜柑か柿か。
オ 黒っぽい波から銅の成分が見つかり、岩群青を使った鮮やかな青だったことが判明。
(6)終わりに
ア 光学検査を基にして、色彩の復原・見取図を作成。
イ キッチリと平成~令和の仕事をして、次世代につなげたい。