近畿文化会「湖東三山の建築」(滋賀県甲良町→愛荘町→東近江市)
令和4年12月4日(日)、近畿文化会「湖東三山の建築」(滋賀県)に参加しました。講師は、京都大学教授(建築史)の富島義幸先生です。
最初に、西明寺(さいみょうじ、甲良町)を訪ねます。
国宝「本堂」は、鎌倉時代前期の創建時は正面五間・奥行五間でしたが、南北朝時代に正面七間・奥行七間に大改造されました。 建て替える方が簡単なのですが、柱や組物などを一間分ずつ外側に動かすことにより、部材を再利用しているのです。そのため、五間の時に外部を向いていた柱の内で元の位置を動いていないものからは風蝕(風雨に曝された跡)が確認できます。
さらに、特別に国宝「三重塔」の内部に入れていただきます。
本尊の大日如来坐像を囲む四天柱には金剛界の菩薩像が描かれています。
壁面には法華経の絵解きが描かれており、初層の「連子窓(れんじまど)」は見せかけの窓です。
昼食後、金剛輪寺(愛荘町)に向かいます。国宝「本堂」は、正面七間・奥面七間と西明寺と同規模です。
外観は端正ですが、内部に入ると直径68cmの太く高い柱が立ち並んでいます。柱には手斧(ちょうな)の跡が残るなど荒々しい印象で、金峯山寺「蔵王堂」(奈良県吉野町)を連想します。
重文「三重塔」は、初層の肘木が全て通肘木(とおしひじき、桁を支える組物)なのが特徴です。
八足門の重文「二天門」は組物に腰組の形式が残ることから、室町時代の創建時は二階を備えた楼門だったことがわかります。
最後は、百濟寺(ひゃくさいじ、東近江市)です。
重文「本堂」は、正面五面・奥面五面と先の二寺に比べて小ぶりです。
外陣には化粧垂木(たるき、屋根を支える部材)がないため内部には柱がなく、さらに天井が貼られていないので、すっきりした印象を受けます。
参道からは、イエズス会宣教師のルイス・フロイスが「地上の天国」と褒めた庭園の築山が見えます。
冨島先生が“滋賀県は中世寺社建築の宝庫”と言われていたことが、湖東三山、特に西明寺で実感できました。