奈良大学博物館「東大寺松龍院 筒井家所蔵 拓本展」
令和3年8月5日(木)午後、奈良大学博物館「東大寺松龍院 筒井家所蔵 拓本展」を観覧しました。
拓本とは、水で湿らせた対象物に紙や布を密着させ、「たんぽ」で墨を当てながらその形を写し取る技法です。
展示される拓本(拓影)は、国宝・重文クラスのものを対象として、東大寺の別当(住職)を務めた筒井英俊・寛秀・寛昭の三師が採拓・収集されたものです。
これは、将来の修理等に備えてのものでした。
しかし、いまでは高解像度のデジタル撮影や三次元計測の技術が進んでいることから、国宝・重要文化財クラスの文化財から採択することはできません。その意味では貴重な資料です。
さらに、細部や微妙な表現が実物大で写し採られているので、素人にもよく分かります。
なかでも、東大寺法華堂不空羂索観音立像の宝冠の化仏と光背は、奇蹟のような拓本です。
戦前に盗難にあったが戻ってきた際に採拓されたものです。通常は遠くから拝観す化仏と光背なので、よくぞ採拓されたものと感謝します。
運慶が若い頃に時に作った円成寺大日如来坐像の光背も、通常は前に仏様がおられて全体を拝見できないので、貴重なものだと思います。
かつて存在した東大寺西大門の勅額今光明四天王護国之寺も、聖武天皇宸筆と伝えられており、興味を惹かれました。
無料でいただける18枚の立派な図録も、貴重な資料です。
地味ですが、充実した内容の展覧会でした。